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ポストコロナ時代と「大学」の〈時間〉(チャプター1)

講師:吉見 俊哉(東京大学)
実施日:2021.12.18 全72分 視聴数:2083回

講義の概要

平成という時代は、大学改革が一過性のブームでなく常態化した時代でありました。大学設置基準の大綱化、大学院重点化や任期制の導入、評価制度、国立大学法人化といった一連の改革は、日本の大学・高等教育システムを大きく変動させました。数多くの課題が明らかになるなか、コロナ禍という予期せぬ事態はそれをより顕在化・深刻化させ、今や日本の大学は、変動どころか深い混迷のなかにあるとさえいえます。とはいえこうした混迷・困難の時代にあるからこそ、大学には自らの力で次代の大学像を検討することが求められるのではないでしょうか。そのためには、大学を「時間的存在」として捉え返すことが必要不可欠です。『大学は何処へ――未来への設計』(岩波新書)を下敷きに、未だ続く大学改革の先で、ポストコロナ時代の大学像を時間論的視座から展望していただきます。

チャプター1:はじめに

イントロでは、岩波新書として上梓された『大学とは何か』と『大学は何処へ 未来の設計』の2冊を紹介し、第二の死を迎えようとしている大学に対し、それを突破するための方法は何か、その方向性を述べています。
『大学とは何か』では、西洋中世に大学が誕生するところから現代に至るまでの歴史の中で大学を捉え返しました。一方、『大学は何処へ』では、現在から未来へ向かって大学はどのように変わっていかなければならないのか、あるいは変わっていけるのかということを考えました。
1990年代以降、日本の大学は、大綱化・大学院重点化・国立大学の独立行政法人化という三大改革というある種の新自由主義的な教育改革の波に襲われてきました。その結果、大学はいま、第二の死を迎えようとしています。どうすればこの状況を突破することができるのか。重要なのは、時間論として大学を捉え直すことだと私は考えています。

カテゴリ: 高等教育リテラシー形成